飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸(トランス脂肪酸)

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近年、厚生労働省による国民健康・栄養調査において、脂質をとりすぎている人の割合が増加傾向にあるというデータが示されています。脂質の過剰摂取は肥満や心筋梗塞などの健康リスクを高めることが確認されている一方で、摂取不足は脳出血などの罹患を増加させることから、食生活への注意が必要となります。

脂質は、コレステロールエステルなどの単純脂質、糖脂質などの複合脂質、そして脂肪酸などの誘導脂質に分類されます。なかでも、脂肪酸は、健康への影響が大きいとして日本および各国で強い関心を寄せています。

脂肪酸は、大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられ、さらに不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分類されます。ここでは、飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸、そして不飽和脂肪酸の一種であるトランス脂肪酸について触れていきます。

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸には、ココナッツ油やヤシ油などの油脂に多く含まれるラウリン酸、乳製品や肉などの動物性脂肪に多く含まれるパルミチン酸やステアリン酸などがあり、食品から摂取される他に、生体内でも合成されます。
飽和脂肪酸は重要なエネルギー源ではありますが、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、脂肪酸の一部である飽和脂肪酸摂取の目標量を、18歳以上の男女において総摂取エネルギーの7%相当以下としています。しかし、農林水産省は通常の食生活における飽和脂肪酸の平均摂取量が目標量よりも多いと推定しています。

多価不飽和脂肪酸

多価不飽和脂肪酸はn-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸に分けられ、生体内でも合成される飽和脂肪酸とは異なり、食物から摂取しなければならない必須脂肪酸であるため、ヒトにとって重要な脂肪酸です。(表1)

表1 必須脂肪酸

トランス脂肪酸においては
分類 脂肪酸 特徴 多く含む食品
n-6系 リノール酸 血液中のコレステロール値、血圧を低下させる。 ごま油、ひまわり油など。
アラキドン酸 免疫機能の調整をする。
※乳児の発達に必要不可欠
レバー、卵白、サザエなど。
n-3系 α-リノレン酸 生体内でDHAやIPAに変換され、同様の働きをする。 えごま油、しそ油、亜麻仁油など。
DHA 血液中の中性脂肪を低下させ、動脈硬化などを予防する。 さば、いわし、ぶりなど。
IPA(EPA) 中性脂肪を低下させ、動脈硬化の改善や抗血栓作用を発揮する。 さば、ぶり、うなぎ、さんまなど。

不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸にはシス型(図1)とトランス型(図2)の2種類があります。

説明画像:左は図1 シス型、右は図2 トランス型

天然の不飽和脂肪酸は通常シス型で存在しますが、油脂を加工・生成する際にトランス脂肪酸が生成されます。さらに、反芻動物から成る製品の中には微量のトランス脂肪酸が天然に含まれています。
トランス脂肪酸は食品から摂取する必要がないと考えられており、過剰摂取した場合には心臓病をはじめとした生活習慣病など、健康への悪影響が示唆されています。
世界保健機構(WHO)は、油脂を加工する際に生じるトランス脂肪酸を減らすための行動計画「REPLACE」を公表し、2023年までにトランス脂肪酸の低減を進めるように呼びかけています。こうしたなか、各国でも食品中のトランス脂肪酸の上限値を施行、部分水素添加油脂の食品への使用を規制する計画を導入するなど、規制強化に向けた動きも活発化しています。
なお、食品中のトランス脂肪酸を完全に禁止している国はなく、多くの場合、天然に由来するトランス脂肪酸は規制されていません。

脂肪酸は重要なエネルギー源で、食物から摂取しなければならない必須脂肪酸も含まれますが、摂取量が多くても少なくても健康被害のリスクを高くすることが示唆されているため、適切な量を摂取することが求められています。また、トランス脂肪酸においては、過剰摂取の健康リスクや、規制されている国へ輸出する際など、特に注意が必要となります。

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参考

→ 成分分析