食肉の「おいしさ」を測る物性検査

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食肉の「おいしさ」の評価

近年、食肉の食味(おいしさ)への関心が高まっています。研究機関でさまざまな研究が進められているとともに、生産・流通においては差別化を図るため「おいしさ」の評価が注目されています。「おいしさ」を評価するには、機器により数値化し客観的に評価する理化学分析、嗜好調査や人が食することによって主観的に評価する官能評価があり、理化学分析の一つに物性検査があります。

物性(ぶっせい)とは、物質の示す物理的性質のことです。食品にはそれぞれ固有の物性があり、咀嚼や嚥下時に物理的感覚として知覚されます。食品にはその特性を決める要因として、味や香りなどさまざまな要素がありますが、食品物性は食感として知覚される感覚であり、食品の特性を決める重要な要素の一つです。

身近な食品において、食感を意識してそのおいしさの要因に目を向けると、例えば肉のおいしさは柔らかさ、繊維感、ジューシーさなどが挙げられます。また、ヨーグルトやアイスクリームなどの乳製品では、滑らかさ、クリーミーさなど、麺では硬さや弾力などの「コシ」が重要です。

ビューローベリタスエフイーエーシーでは、食肉において主に豚・牛・鶏など畜肉の赤身部分を対象とした「おいしさ(物性)検査=食味構成要素分析」を行っています。食肉の物性検査においては、評価部位、保存方法、熟成時間等の条件をそろえることが重要です。牛肉において検査を行う部位は、一般に枝肉格付が行われている「第6-7胸椎間の胸最長筋」を利用する例が多いですが、近年は「半膜様筋(うちもも)」の評価も重視されています。

ビューローベリタスエフイーエーシーでは、第6-7胸椎部における、胸最長筋(リブロース)に加え、第10-11胸椎部位の胸最長筋(サーロイン)、半膜様筋(うちもも)、半腱様筋、大腰筋、広背筋、背半棘筋について検査を実施しています。豚肉についてはロース、鶏肉はモモ肉、ムネ肉をサンプル採取いただいています。

食肉のおいしさ(物性)検査項目と方法

基本的な項目は「圧搾肉汁率」、「加熱損失」、「やわらかさ」、「しなやかさ・柔軟性」、「噛みごたえ」、「もろさ」で、それぞれの項目の概要は以下のとおりです(表1・図1)。

項目 概要
圧搾肉汁率
  • 加熱、加圧したときにどれだけ肉汁が出るかを示す。
  • 値が高いほどジューシーさがある。
  • 肉の圧搾肉汁率はおよそ34.2~43.5%である。
加熱損失
  • 加熱したときにどれだけ肉汁が出るかを示す。
  • 値が北緯ほど加熱をしてもうまみが逃げ難い。
  • 肉の加熱損失はおよそ19.3~33.3%である。
やわらかさ
  • 肉を破断したときの圧搾応力(図1:A点の圧縮応力)。
  • 調理後の肉を前歯で噛んだときにどれだけの力で筋繊維を断ち切れるかを示す。
  • 値が高いほどかたい。
しなやかさ・柔軟性
  • 噛んだときに反発して帰ってくる力(図1:面積比(△ABC/曲面AEBC))。
  • 値が高いほどしなやか。
噛みごたえ
  • 肉が噛むためにどのぐらいの力を要したか(図1:曲面AEBC面積)。
  • 値が高いほど噛みごたえがある。
もろさ
  • 破断するまでにどれだけプランジャーが侵入したか(図1:試料の厚さ/距離L)。
  • 数値が高いほどもろい。
図1 時間(プランジャー侵入距離)
テンシプレッサー装置
テンシプレッサー装置

「加熱損失」は加熱前の肉片重量と加熱後の肉片重量の差で求めます。その他の項目は測定する畜肉を各種項目検査の条件に合わせた状態の肉片を準備し、テンシプレッサー装置で加圧することで測定できます。「やわらかさ」、「しなやかさ・柔軟性」、「噛みごたえ」、「もろさ」については圧力と時間の関係で得られる「圧縮応力」と「背圧応力」から導き出すことができます。

本検査の評価は数値で表されますが、絶対評価ではなく相対評価となります。そのため、検査の際は2検体以上であることが望ましいです。 またビューローベリタスエフイーエーシー独自の蓄積データベース(肉類)との比較により、市販製品における自社製品の位置づけの把握も可能です。

ビューローベリタスエフイーエーシーでは、畜肉に関して、おいしさ(物性)検査の他にも融点や脂肪酸組成、遊離アミノ酸分析などの分析も実施しています。パネル(評価員)による官能評価も行っており、食肉(牛・豚・鶏ほか)以外の評価も可能です。クレーム品や保存後の食品の品質確認、現状商品と試作品の比較、競合商品との比較などにご活用いただいています。

参考

→ 食品おいしさ分析