ペットフード市場
近年、ペットフードは多様化している一方、食中毒や健康被害なども報告されています。ペットの健康を守るため、ペットフードに高い品質が求められています。
2022年の全国犬猫飼育態調査(一般社団法人ペットフード協会)では、犬・猫 推計飼育頭数全国合計は1,589万頭。犬・猫の飼育頭数・飼育率はほぼ前年から横ばいでした。一方、2021年ペットフード産業実態調査結果では、ペットフード産業の出荷総額は、351,799 百万円で、対前年度比は 104.2%と、6年連続での増加となりました。
経済産業省METI Journal ONLINE(2023年8月)でも、「犬については登録された頭数については減少傾向が鮮明だ。猫については、確かな情報の把握は難しいようだが、犬猫調査によると横ばいのようだ。一方で、飼育にかかるコスト、つまりペットフード、ペット用品については頭打ちの様相も見えるが減少はしていないように見える。ペットフードも犬用は消費者物価指数によれば、2022年4月から値上がりしている。猫用のペットフードも同様に2023年4月以降急激に値上がりしている。」とのこと。
近年のペットフードのプレミアム(高付加価値商品)指向の強まりに加え、新型コロナウイルス感染症による外出自粛の中、ペットと過ごす時間が増えたことや、ペットにより良いフードを与えたい、コミュニケーションをとりたいという考えから、よりペットへの健康意識の高まりが市場伸長の要因になっていると、矢野経済研究所は解説しています。
また、飼育環境の向上からペットの高齢化が進んでいることで、味や栄養にこだわったフードなども注目されています。
ペットフードに関する法基準
それでは、ペットフードにはどのような規制や基準があるのでしょうか。
日本においては次のような法令や基準があります。
日本における代表的な法令や基準
法律
- 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)
ペットフードの安全性確保及びペットの健康を保護する目的として、平成21年(2009年)6月に施行されました。対象は愛がんを目的として飼育される犬・猫用のフードです。
ペットフードの製造、輸入または販売に関する規制の他、表示義務、届出・帳簿備え付け義務などを設けています。また流通するペットフードを監視し問題が起きた時には廃棄・回収を命じることができます。
政令
- 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律施行令
ペットフード安全法のおける愛がん動物を犬・猫と定義しています。また輸出のための製造、販売または輸入については対象外としています。
省令
- 愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令
ペットフード安全における愛玩動物用飼料の成分規格並びに製造の方法及び表示の基準について制定しています。
成分規格としては、添加物・農薬・汚染物質(カビ毒・重金属・有機塩素系化合物)などの含有量について上限値を設定しています。
→ ペットフード:成分規格検査
基準
- 飼料等の適正製造規範(GMP)ガイドライン
適正製造規範(Good Manufacturing Practices:製造業者規範ともいう)はペットフードに適用される法令・基準や規約を守り、適切な製造工程を管理するために制定されます。
安全な飼料を供給するために実施する基本的な安全管理(Good Manufacturing Practices)を事業者自らが導入するための指針として、農林水産省より2015(平成27)年6月に定められました。
その他
- 有機JAS(日本農林規格)
有機食品のJASに適合した生産が行われていることを登録認証機関が検査し、その結果、認証された事業者は有機JASマークを貼ることができます。有機JASマークが貼付されていない農産物や農産物加工食品の名称に「有機」や「オーガニック」といった言葉を使用することは禁止されています。
一部のペットフードに関しても有機飼料として有機JASマークを貼付することができるかどうかは、「有機食品等の検査認証制度」をご確認ください。なお、ビューローベリタスジャパン株式会社 システム認証事業本部は日本農林規格登録認証機関として認証業務を行っています。
→ 有機JAS認証 - その他
「有機原料を使用しています」等の表示が可能か等については、ペットフード安全法の規定はありませんが、景品表示法の優良誤認に該当しないか、消費者庁に確認してください。
成分の効果効能、用法容量等から医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の適用を受けるかは、「動物用医薬品等に該当するか否かの考え方」のページをご参照の上、必要に応じて事業所が所在する都道府県へ確認してください。
→ ペットフード安全法 表示に関するQ&A(農林水産省)日本における「動物の愛護及び管理に関する法律(通称:動物愛護管理法)」は、所有者・占有者・販売業者の責務や、動物取扱業の登録義務を課していますが、ペットフードの基準や製造・販売・輸入に対す規制は設けていません。
また「飼料の安全性の確保および品質の改善に関する法律(通称:飼料安全法)」は、飼料及び飼料添加物の製造等に関する規制や、飼料の安全性の確保や品質改善のため公定規格の設定等を行っています。しかしこれは飼料が原因となり有害畜産物が生産、または家畜被害により畜産物の生産へ影響が生じないことを目的としており、ペットフードについては規制の対象とはなりません。