食品中に残留する農薬などが人の健康に害を及ぼすことのないよう、厚生労働省は、全ての農薬・飼料添加物・動物用医薬品について、残留基準を設定しています。残留基準は、”人が摂取しても安全である”と食品安全委員会が評価した量の範囲で、食品ごとに設定されています。農薬などが基準値を超えて残留する食品の販売や輸入は、食品衛生法により禁止されています(「ポジティブリスト制度」/消費者庁_食品中の残留農薬等)。
検査方法
残留農薬分析にあたっては、厚生労働省「食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法について(平成17年1月24日付け食安発第0124001号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)」に定める方法またはこれに準ずる方法で行います。
現在、世界では1,000を超える農薬が使用されており、多種類の農薬の分析を効率的に短時間で行うためには、一斉試験法が不可欠となっています。
食品中の多様な夾雑成分の中で、多項目の残留農薬の定量・定性を正確に行うには、ガスクロマトグラフ(GC)や液体クロマトグラフ(LC)に質量分析装置を複数備えたタンデム型質量分析装置(MS/MS)の存在が欠かせません。
GC/MS/MSやLC/MS/MSは、GC/MSやLC/MSと比較し高い精度で分析が可能です。
- 相対感度が高いことで微量(10ppb単位)での成分分析ができるため、試料濃縮の前処理工程を省くことで、納期短縮が可能
- 夾雑成分(不純物)が検出されにくいため偽陽性が少なくなり、短時間での解析が可能
現在では、QuEChERS法(抽出法)など、海外の研究をもとにした簡易で迅速な検査法を採用し、高性能な機器による測定と検査法の迅速化によって、短時間で効率的な検査が可能となっています。
ビューローベリタスエフイーエーシー株式会社では、GC/MS/MSやLC/MS/MS等の高精度の機器を用いた残留農薬の一斉分析を行っております。下記に現在の分析項目について示します。
検査項目 | 必要量(目安) | 備考 |
---|---|---|
残留農薬58項目一斉分析 | 生鮮品500g以上 加工品200g以上 |
LC/MS/MS法 |
残留農薬96項目一斉分析 | LC/MS/MS法 | |
残留農薬149項目一斉分析 | LC/MS/MS法 | |
残留農薬207項目一斉分析 | GC/MS/MS法 | |
残留農薬260項目一斉分析 | GC/MS/MS法 | |
残留農薬262項目一斉分析 | GC/MS/MS法 | |
残留農薬329項目一斉分析 | GC/MS法(またはGC/MS/MS法) | |
残留農薬443項目一斉分析 | GC/MS法・LC/MS/MS法 | |
残留農薬 有機リン系57項目一斉分析 | GC/MS/MS法 | |
ネオニコチノイド系農薬9項目一斉分析 | GC/MS/MS法 |
図1:弊社で残留農薬の測定に使用しているガスクロマトグラフ-タンデム質量分析計(GC-MS/MS)
図2:弊社で残留農薬の測定に使用している液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)
検査フロー
例としてGC-MS/MSによる残留農薬一斉法のフローを示します。
- 試料▼
- ホモジナイズ(均質化)▼
- 塩析+脱水(塩、糖などの除去)▼
- 振とう▼
- 遠心分離▼
- 脱脂▼
- 振とう▼
- 遠心分離▼
- 抽出液▼
- ミニカラムコンディショニング▼
- 抽出液の注入▼
- 洗浄液の注入▼
- 濃縮▼夾雑成分(不純物)の除去
- 試験溶液▼
- GC-MS/MSによる分析
野菜、果実など多様な食品に対応しております。基本的には生鮮食品が対象ですが、加工食品にも適用可能な場合もございます。納期は別途ご相談させていただきます。お気軽にお問い合わせください。
輸入食品における検査
食品中の農薬の残留基準値は、農薬を定められた使用方法で使用した際の残留濃度等に基づき設定されています。各国において、農薬の使用の可否や使用方法はその国の気候、病害虫の発生状況や栽培実態を踏まえて定められており、それを基に定められる残留基準値も異なります。
また、同じ食品であっても、日本と海外で検査部位が異なる(例:玄米と精米)ことにより、残留基準値が異なる場合もあります。そのため輸入食品は、輸入時に検疫所において、日本の残留基準に照らし合わせて残留農薬の検査等を行います。
検疫所へ届出された輸入食品の中から、輸入食品監視指導計画に基づいて、モニタリング検査が行われます。違反が確認されると検査の頻度を高めたり、違反の可能性の高い食品に対しては、輸入の際に都度検査を行います。違反が確認された食品は廃棄させ、原因究明や再発防止を指導するなどの措置を講じられます。
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参考資料
消費者庁ウェブサイト ※2024(令和6)年4月1日に、食品衛生基準行政は、厚生労働省から消費者庁に移管されました。