カビ毒の分析

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日本では基準値が設定されているカビ毒があります。今回はカビ毒の中で「総アフラトキシン」の含有量測定方法をご紹介します。

カビ毒とは

カビの産生する代謝物のうち、人や動物の健康に悪影響を及ぼす毒素の総称で、別名マイコトキシン(mycotoxin)とも呼ばれます。 カビ自体は加熱によって死滅しますが、カビ毒は熱に強く、通常の調理や加工の温度(100℃から210℃)や時間(60分以内)では、完全に分解することができません。そのほか、茹で、炒め、炊飯などの一般的な調理方法でもほとんど減りません。

一部の食品の製造工程においては、食品添加物によってカビ毒を除去できる場合があります。とうもろこしを原料とする食用油の場合は、原料油に含まれる不純物を除くための脱酸工程で食品添加物のアルカリ剤が使用され、大半のカビ毒が分解されます。その後の精製工程でも分解され、製品になるまでにはカビ毒は完全に除去されます。しかしながら、ナッツ類や穀類は熱に強いため、カビ毒で汚染されていた場合、焼いてもカビ毒が分解されずに残存してしまいます。

カビ毒は現在300種類以上確認されており、種類によって汚染される農産物や時期、場所が異なります。以下の表は食品を汚染する代表的なカビ毒です。

名称 人体への作用 汚染される食品例 残留基準値
(食品衛生法)
アフラトキシン類 肝臓における発がん性 穀類、落花生、ナッツ類、とうもろこし、乾燥果実 10μg/kg
アフラトキシンM1 肝臓における発がん性 0.5µg/kg
オクラトキシンA 肝臓や腎臓への毒性 穀類、豆類、乾燥果実、飲料 なし
デオキシニバレノール 嘔吐や食欲不振などの急性中毒、免疫系への慢性毒性 麦類をはじめとした穀類 1.0mg/kg
ニバレノール なし
パツリン 消化管の充血や出血、潰瘍 りんご 0.050ppm

日本では、アフラトキシン類、デオキシニバレノールおよびパツリンについては、食品衛生法に基づく基準値が設定されています。
オクラトキシンAについては、内閣府食品安全委員会が2014(平成26)年に、食品からの摂取が一般的な日本人の健康に悪影響を及ぼす可能性は低いとする評価結果を公表しています。しかし、汚染の程度は気候等の影響を受けやすいため、リスク管理機関において汚染状況についてのモニタリングを行うとともに、規格基準について検討することが望ましいとされています。

総アフラトキシン分析

アフラトキシン類は、穀類、落花生、ナッツ類、とうもろこし、乾燥果実などに寄生するアスペルギルス属(コウジカビ)の一部のかびが産生するカビ毒であり、食品から検出される主要なものに4種類のアフラトキシン(アフラトキシンB1、B2、G1、G2)があります。

ビューローベリタスエフイーエーシーではカビ毒の検査を実施していますが、今回は総アフラトキシン分析についてご紹介します。「総アフラトキシン」と称される4種類(アフラトキシンB1、B2、G1、G2)の含有量の測定を行います。
アフラトキシンは天然物質として最も強い発がん性を有することで知られており、厚生労働省は食品中の総アフラトキシンについて、農林水産省は飼料中のアフラトキシンB1について規制値を設定しています。

分析フロー

  1. 試料摂取

  2. 抽出

  3. 精製

  4. 誘導体化

  5. HPLCによる定量検査
  6. 基準値以下
    基準値越え
  7. HPLC再試験
  8. 基準値越え
  9. LC-MS/MSによる確認試験
  10. 分析終了

HPLC(高速液体クロマトグラフ)による定量検査の結果が基準値を超えた場合はLC-MS/MS(液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計)による確認検査を実施します。

ガスクロマトグラフ-タンデム質量分析計(GC-MS/MS)の画像

定量検査で使用するHPLC(高速液体クロマトグラフ)

液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)の画像

確認検査で使用するLC-MS/MS(液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計)

詳細についてはお気軽にご相談ください。

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参考文献

→ 重金属・有害物質