■ 米品種識別検査はDNAの検査です
植物ゲノムの中でもミトコンドリアは進化スピードが比較的早く、同じ作物種内であってもさまざまなパターンのゲノムが存在しています。基本的に持っているパーツは同じであっても、並び順が簡単に組み変わっていくためです。また、核ゲノムの交配の際に両親からもたらされたパーツが融合した後、一部組み変わって子孫に受け継がれていくのは、動物および植物に共通する変化です。
そのような変異が蓄積されているゲノムの中から、変異点を検出できるものを『マーカー』と呼びます。なかでも品種というカテゴリ内では安定しているけれど、品種をまたぐと反応が変わるマーカーを複数用いることによって、品種間の差異が検出され、判別を可能にします。図1に示すように、マーカーaにのみ反応する品種A、マーカーbにのみ反応する品種Bがあったとき、どちらのマーカーにも反応しない品種XはAでもBでもないことがわかります。
図1 マーカーによる識別モデル
■ 検査方法
定量検査は25粒または50粒の米を、1粒ずつDNAを抽出して検査します。対して定性検査の場合は、一定の重量の米を粉砕して均一化したのちDNAを抽出し、対象品種以外の混入が見られないか調べます。例えば検体X、Y、Zの表示品種が反応しないマーカーa、bについて、5%標準よりも太いバンドが現れた場合には、多品種が5%以上混ざっていることになります。図2の結果では検体X、Yは「陰性」ですが検体Zは「陽性」と判定されます。
図2 他品種混入判定モデル
■ データベース
ビューローベリタスエフイーエーシー株式会社は、30種以上の品種識別マーカーを用いて米品種一つひとつの反応パターンを調べ上げ、データベースを作成し、どの品種の識別検査が可能であるかの情報を蓄積しております。
276品種の識別検査が可能です(2023年6月)。