低分子水溶性食物繊維と分析(酵素-HPLC法)

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1.はじめに

食品表示法改正に伴い、2020年4月より加工食品の栄養成分表示が義務化されました。消費者が栄養成分表示を目にする機会が増え、また加工食品購入時、必要な情報として利用されています。食物繊維は、栄養成分表示の必須項目ではありませんが、ヒトにとって重要な栄養素のひとつで、消費者から関心が高いことから表示を行なっている商品が多くなってきています。

食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類され、水溶性食物繊維のなかでも高分子と低分子に分けられます。
低分子については、通常の分析法(酵素‐重量法)では測定できないため、高速液体クロマトグラフ(HPLC)を使用して分析を行います。今回は低分子水溶性食物繊維とその分析方法についてご紹介します。

2.低分子水溶性食物繊維とは

水溶性食物繊維にはペクチンやアルギン酸、不溶性食物繊維にはセルロースやリグニンなどの成分があります。低分子水溶性食物繊維は、そのなかでもさらに消化されにくい性質を持っており、例として難消化性デキストリンやポリデキストロースなどがあります。
これらは、摂取できる食物繊維を増やすために添加されることが多い成分です。

3.分析方法(酵素‐重量法、酵素‐HPLC法)について

食物繊維には酵素‐重量法と酵素‐HPLC法の2つの分析方法があります。

酵素‐重量法

試料を3種類の酵素で処理し、4倍量のエタノールにより沈殿を生じさせ、これを吸引ろ過して得た残渣を乾燥させた後に秤量します。秤量後の残渣についてたんぱく質および灰分を定量化し、秤量値からこれらの値を除いた分を食物繊維量とします。

酵素‐HPLC法

酵素‐重量法で測定されない低分子水溶性食物繊維(難消化性デキストリン、ポリデキストロース等)を添加している食品に適用される分析方法です。酵素‐重量法で生じた ろ液について、イオン交換樹脂によりたんぱく質、有機酸および無機塩類を除去した後、HPLCにより三糖類以上の画分を測定し、酵素‐重量法の結果と合計して食物繊維量とします。

4.酵素‐重量法と酵素‐HPLC法での検査結果の違い

食品に低分子水溶性食物繊維素材が含まれるものやイヌリンを多く含むもの、低分子水溶性食物繊維を添加している場合についても酵素‐HPLC法で測定すると高い分析値が得られることから、本法で測定するのが望ましいです。

酵素‐重量法と酵素‐HPLC法での結果が異なる食品例を3つほどご紹介します。

食品例酵素-重量法酵素-HPLC法
水溶性 不溶性 総量 低分子量水溶性 高分子量水溶性 不溶性 難消化性でん粉 総量
じゃがいも
(塊茎 皮なし 生)
0.4 0.8 1.2 1.3 3.6 4.0 0.1 8.9
そば 半生そば 1.1 2.0 3.1 2.1 1.9 3.0 0.3 6.9
角形食パン 食パン 0.4 1.9 2.2 1.0 0.9 2.3 1.1 4.2

(日本食品成分表八訂より抜粋)

このように、水溶性食物繊維の測定数値が食物繊維の総量差に大きく影響しますので、食品によっては、水溶性、不溶性を測定するのか、低分子水溶性食物繊維を含めて測定するのか、目的に応じて分析方法を選択されることをお勧めします。

参考文献

→ 成分分析