食品ロス低減のため期限設定の延長が望まれており、各メーカーはさまざまな取り組みを行なっていると思います。
今回は期限設定の考え方や設定のために必要な試験・検査について紹介いたします。
期限表示が必要な食品は、生鮮食品から加工食品まで多岐にわたります。個々の食品の特性に十分配慮したうえで、食品の安全性・品質などを正確に評価するための指標に基づき、期限を設定する必要があります。
消費期限と賞味期限の違い
食品の期限表示には「消費期限」と「賞味期限」という2通りの方法があります。
消費期限 |
未開封の状態で表示された保存方法を守り保存していた場合に、その年月日まで「品質の劣化による安全性の保持が認められる」期限。 品質の劣化の早い食品に表示されています。 ex. 弁当、サンドイッチ、生菓子など |
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賞味期限 |
未開封の状態で表示された保存方法を守り保存していた場合にその年月日まで「期待される品質の保持が十分に可能であると認められる」期限。 消費期限に比べ、品質の劣化が比較的緩やかな食品に表示されています。製造日から賞味期限までの期間が3ヶ月以上のものは、年月での表示ができます。 この期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではありませんが、食べられるかどうかは消費者の個別の判断が必要になります。 ex. スナック菓子、カップ麺、ペットボトル飲料など |
食品の期限表示のための指標
賞味期限設定に必要な客観的な項目とされる指標とは、「理化学検査」、「微生物検査」などにおいて数値化することが可能な項目のことです。
ただし、主観的な指標と考えられる「官能検査」における色や風味なども、客観的な指標(適切にコントロールされた条件下で、適切な被験者により的確な手法によって実施され数値化された場合)とすることが可能と判断されます。
代表的な期限設定における検査は、以下のようなものになります。
理化学検査
食品の製造日からの品質劣化を理化学的分析法により評価するもの。
製造日の測定値と製造日以後の測定値を比較検討することで、普遍的に品質劣化を判断することが可能です。例として、下記の検査項目が挙げられます。
「pH」…品質劣化の指標
「酸価(AV)」「過酸化物価(POV)」…油脂の劣化の指標
「揮発性塩基窒素(VBN)」…腐敗度合の指標など
微生物検査
食品の製造日からの品質劣化を微生物学的に評価するもの。
食品の種類、製造方法、また湿度や時間、包装などの保存条件に応じて、効果的な評価の期待できる微生物学的指標を選択する必要があります。
また、食品の種類などにより、基準を満たすために許容可能な結果は異なることを考慮する必要もあります。
官能検査
食品の性質を人間の視覚・味覚・嗅覚などの感覚を通して、それぞれの手法に則った一定の条件下で評価するもの。
測定機器を利用した試験に比べ、誤差が生じる可能性が高く、また結果の再現性も体調、時間帯などの多くの要因により影響を受けます。
しかし、指標に対して適当な機器計測法が開発されていない場合や、測定機器よりも人間の五感の感度が高い場合などに有効利用することができます。
安全係数の設定
賞味期限設定は、客観的指標が得られた期限に食品の特性に応じた1未満の安全係数を掛けて設定することが基本となります。
安全係数の目安は、品質の変動が少ないものは一般的に0.8以上が望ましいとされていますが、変動が多い可能性があるものなどは0.6~0.7などが用いられます。
期限設定のための検査は、その食品に対し期待される品質が十分に保持される期限の目標日数を決め、食品の特性を考慮して目標日数を安全係数で割った日数で行います。
例えば目標日数を30日間、安全係数を0.7とする場合
30日÷0.7=42日間 となります。
42日間保存した後に上記理化学検査や微生物検査を行い、品質の保全が認められれば30日間の賞味期限を設定することができます。
このように、賞味期限設定は安全性の根拠となる指標に基づいたうえで、ゆとりを持った設定を行います。
今後は、上記の試験・検査に加え、食品の成分の変化を確認する必要もあると考えています。
例えば、おいしさの指標となる遊離アミノ酸、脂肪酸組成、核酸などを検査し、時間経過による製品の熟成度合いや劣化度合いの科学的数値変化を確認することで、その製品を食すために最適な時期を判断し、製品提供開始時期や期限設定を検討するといったことです。
食品の種類によって検査が必要な項目や保存温度等も異なります。上記に挙げた項目以外にもさまざまな項目の検査が可能です。
食品の期限設定のための検査について、ぜひお気軽にご相談ください。