魚肉の理化学的鮮度指標として用いられる「K値」とは、ATP(アデノシン三リン酸)とその分解生成物全量に対するHxR(イノシン)十Hx(ヒポキサンチン)量の百分率であり、その値が小さいほど鮮度が良好なことを示します。
魚の筋肉中には運動のエネルギー源であるATPが存在します。
魚の死後には次のように分解されることが明らかになっています。
K値(%)=(HxR十Hx)/(ATP十ADP十AMP+IMP十HxR十Hx)×100
一般的にK値が60%以上となると腐敗、刺身として適当とされるK値は20%といわれています。また、タラや赤身魚はK値の上昇速度が速く、タイやヒラメなどの白身魚は比較的上昇速度は緩やかであるなど、K値の上昇度合いは魚種により異なることが知られています。
K値を導き出すためのATP~Hx測定の検査工程
- 試料(5g)▼+0.4N 過塩素酸水溶液 20ml ホモジナイズ
- 定容(40ml)▼
- 遠心分離▼
- 上澄み液(5ml)▼+2N K2 CO3 溶液 1ml
- 遠心分離▼
- 濾過(シリンジフィルターGFP)▼
- 試験溶液▼
- 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて測定
魚肉の理化学的指標としては、このほかに「揮発性塩基窒素(VBN)」があります。VBNはアンモニア、トリメチルアミン等のことで、細菌や酵素の作用によりたんぱく質が分解されて増加するため、腐敗指標として用いられますが、時間的増加はゆっくりであることから鮮度指標としては不適と考えられます。
- K値はVBNに比べ、時間経過による変化が大きく鮮度指標として有効
- VBNはK値に比べると必ずしも鮮度指標としては有効ではない
ビューローベリタスエフイーエーシーでは、K値、VBNともに検査を実施しています。微生物検査(一般細菌数、低温細菌数)を併用することで、魚肉の状態をより正確に把握し、安全を確認できます。
参考
- 1)日本水産学会誌 Vol.24(9)(斎藤 恒行, 榎本 則行, 松吉 実,日本水産学会,1959,p 749-750)
- 2)魚の科学(鴻巣章二 監,朝倉書店,1994,p45)
- 3)生鮮水産物 鮮度保持マニュアル(概要版)(北海道水産林務部)
- 4)日本農林規格0023:2022 魚類の鮮度(K値)試験方法- 高速液体クロマトグラフ法