食品中の異物として、昆虫が混入していたという事例があります。野菜などでは昆虫の卵、幼虫、さなぎ、成虫が付着、混入することが多く、その野菜を餌としている甲虫やガ、チョウの仲間が多くみられます。
加工食品に混入する場合もありますが、混入したタイミングを知り、混入原因を究明し、製造所の環境改善や製造作業の改善を行うことが大切となります。
昆虫類の異物検査の流れ
- 外観観察
異物の大きさ、重さ、形状および色調などの特徴を目視で確認します。 - 実体顕微鏡や生物顕微鏡による観察
顕微鏡で異物の構造や特徴(外骨格の有無、目、触角、とげ、羽の構造など)を観察します。 - カタラーゼ試験(必要に応じて実施)
生体の細胞にはカタラーゼ酵素が存在します。カタラーゼ酵素は加熱を受けた場合や死亡してから長時間経過(長時間の期間をしていると働きを失うため、加熱工程の前後または混入から長時間経過しているかの判断材料となります。
カタラーゼは細胞で生産される過酸化水素を酸素と水に分解する働きがあります。この反応を利用して、異物(生体)に過酸化水素水を接触させ、発泡するかしないかを確認します。発泡すればカタラーゼ酵素が存在することを示します。 - 昆虫類の生物分類階級レベルでの判別
外観観察、実態顕微鏡や生物顕微鏡による観察から得られた特徴を基に、生物の分類階級の判別を可能な限り行います。多くは「目」、「科」レベルとなります。一般的に昆虫の場合は成虫が最も分類階級の判別がしやすく、さなぎ、幼虫と若い世代になるほど判別が困難になっていきます。また、虫体が部分的にある場合では判別が困難になります。
また、「科」レベルでの判別ができた場合は、その昆虫の生態も分かるため、製造所内部で繰り返し発生する昆虫か、外部から侵入してくる昆虫なのかにより、原因究明のための重要な要因となり、改善対策も異なってきます。
昆虫の異物混入の例
①弁当:コウチュウ目(クロウリハムシと推測)、カタラーゼ陽性であったことから加熱工程の後に混入したものであると考えられました。
写真1:外観観察(コウチュウ目) | 写真2:カタラーゼ試験発泡例(陽性) |
ビューローベリタスエフイーエーシー(株)撮影
②冷凍レンコン:昆虫の幼虫(昆虫種の判定はできなかったが鱗翅目の幼虫に類似)、カタラーゼ陰性であったことから加熱を受けている可能性が考えられました。
写真3:外観観察(昆虫の幼虫) | 写真4:カタラーゼ試験(陰性) |
ビューローベリタスエフイーエーシー(株)撮影
今回は昆虫類の異物検査の例を紹介しましたが、ビューローベリタスエフイーエーシーではさまざまな異物について検査を行っています。
参考情報
- 食品衛生検査指針 理化学編 追補2019 第10章 異物(公益社団法人日本食品衛生協会)
異物検査の使用機器
- 実体顕微鏡(KEYENCE製 VH-Z100R/VHX-950F)
- 生物顕微鏡 OLYMPUS BX50