アレルギー物質を含む食品の検査の流れ(ELISA法)

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食物アレルギーとは、食物を摂取した際、身体が食物に含まれるたんぱく質等(アレルゲン)を異物として認識し、自分の体を過剰に防御することで起こる不利益な症状のことです。

出典:加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック[消費者庁/令和5年3月作成(令和6年3月一部改訂)]

食物アレルギー表示制度の概要

食物アレルギーの表示制度は、食品表示法(平成25年法律第70号)に基づく食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)に規定され、発生状況等を踏まえ改正されてきました。
この制度では特定原材料を含む加工食品、特定原材料由来の添加物を含む生鮮食品の一部および特定原材料に由来する添加物について表示が求められています。

重篤度が高く症例数の多い8品目(特定原材料:えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ))は表示が義務づけられ、また過去に一定の頻度で健康危害が見られた 20品目(特定原材料に準ずるもの)については通知※1により表示が推奨されています。
原材料中の個々の特定原材料等の総たんぱく含量が一定量以上(数μg/g以上または数μg/ml以上)※2含まれている場合に表示が必要です。なお「入っている可能性がある」といった表示は禁止されています。

※1 消費者庁通知「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号)
※2 単位 ppm=百万分の1(1μg/ml,1μg/g=1ppm=1mg/L,1mg/kg)

なお、輸入食品に関しても表示の必要があります。外国語での表示があっても邦文での表示がない場合は、食品表示法の違反となり罰則が適用されます。また欧米諸外国の「グルテンフリー」表示と日本における「食物アレルギー表示」は基準が異なるため注意が必要です。

検査方法

アレルゲンを含む食品の検査方法について消費者庁から発出された通知※3では、スクリーニング検査として定量検査法のELISA法(検査特性の異なる2種)、確認検査として定性検査法のウエスタンブロット法、PCR法、リアルタイムPCR法やPCR-核酸クロマト法を紹介しています。
これらの検査方法は、特定原材料の表示制度を行政が科学的に検証することを目的として開発されたもので、現時点で最も信頼性が高いと考えられる方法です。ただし、食品加工による特定原材料成分の変化・分解や食品からの抽出効率の変動により、この検査法による特定原材料総タンパク質含有量の測定結果は、実際の含有量と必ずしも正確に一致しないことがある点に注意が必要です。

※3 消費者庁通知「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号)別添 アレルゲンを含む食品の検査方法

ビューローベリタスエフイーエーシーでは食物アレルギー検査の受託を行っており、5種類の方法で検査が可能です。
ELISA法(定量検査)/イムノクロマト法(定性検査)/PCR法(定性検査)/リアルタイムPCR法/ウェスタンブロット法(定性検査)

それぞれの検査方法の特徴と、実施可能な項目についてはこちらの記事でご紹介しています。
→ 食品ごとのアレルギー検査の種類

検査の流れ(ELISA法)

ELISA法の検査の流れを紹介します。

1.粉砕、均一化
フードカッターで被検食品を粉砕

被検食品を一包装単位ごとにミキサー、フードカッター等を使用し、均一に粉砕し調整試料とします。
試料1gをプラスチック製遠沈管にはかり、検体抽出液19mlを加えてよく混合し、固形分を均等に分散させます。

(写真:コンタミネーション防止のため、専有化した器具を使用)

2.タンパク質の抽出
遠沈管を室温で一晩振とう

振とう機に遠沈管を横にして置き、室温で一晩(12時間以上)振とうし、抽出試料とします。
抽出試料を3,000xg、室温で20分間遠心分離し、ろ過。
ろ液を希釈液で20倍に希釈したものを測定試料とします。

(写真:振とう機)

3.測定操作
1次反応
抗体個相化プレートをフレームにセット

抗体個相化プレートをフレームにセットし、各ウェルに標準溶液、測定試料を分注、プレート用ふたをして室温で正確に1時間静置し反応させます。
測定試料中の抗原タンパク質がプレート上の個相化ポリクローナル抗体に結合し、「個相化抗体/抗原タンパク質」の複合体を形成

(使用キット:森永生科学研究所製 モリナガFASPEK ELISAⅡ)

2次反応
ウェル内の溶液を除去 反応終了後、ウェル内の溶液を除去し、洗浄液を加えてこれを捨てる操作を繰り返し洗浄します。
この時プレートを逆さまにし、ペーパータオルの上で数回強くたたきつけ水切りを行い、液と気泡を完全に取り除きます。
酵素標識抗体溶液を各ウェルに分注 酵素標識抗体溶液を各ウェルに分注し、ふたをして室温で正確に30分静置し反応させます。
酵素標識ポリクローナル抗体が複合体上の抗原タンパク質に結合、サンドイッチ複合体を形成
酵素反応
ふたをして室温遮光下で20分間静置 反応終了後、再びウェル内の溶液を除去、洗浄します。
酵素基質溶液を各ウェルに分注し、ふたをして室温遮光下で正確に20分間静置し反応させます。
酵素基質溶液を加えると、プレート上の抗原・抗体複合体に結合した酵素により呈色
反応停止
軽く攪拌し酵素反応を停止 20分間静置後、反応停止液を各ウェルに分注し、軽く攪拌し酵素反応を停止します。
吸光度測定
プレートリーダー 反応停止後、30分以内にプレートリーダーにて主波長450nm、副波長600~650nmの吸光度を測定します。
標準溶液の吸光度より標準曲線を作成、食品中のタンパク質濃度を算出します。
4.特定原材料由来タンパク質濃度の算出
吸光度の平均値を算出 測定した各ウェルの吸光度の平均値を算出し、4パラメーターを用いて標準曲線を作成します。
標準曲線より各測定試料溶液の濃度を読み取り、抽出操作時の希釈倍率を乗じて食品中の特定原材料由来タンパク質濃度を算出します。

PCR法、イムノクロマト法の流れはこちらでご紹介しています。

→ アレルギー物質を含む食品の検査の流れ(PCR法)
→ アレルギー物質を含む食品の検査の流れ(イムノクロマト法)

その他関連コラム

→ アレルギー物質(特定原材料)を含む食品の検査(ELISA法、PCR法)

参考資料

加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック[消費者庁/令和5年3月作成(令和6年3月一部改訂)]

→ 食物アレルギー含有検査