遺伝子組換え食品検査の流れ

投稿日:

ビューローベリタスエフイーエーシーでは遺伝子組換え作物(GMO)検査を米国 FoodChain ID(旧Genetic ID)社の測定法により検査を実施しています。
今回は、検査の流れについて使用機器とあわせてご紹介します。

遺伝子組換え食品とは

遺伝子組換え食品とは、別の生物の細胞から取り出した有用な性質を持つ遺伝子を、その性質を持たせたい植物等の細胞の遺伝子に組み込み、新しい性質をもたせる技術を用いて開発された作物及びこれを原料とする加工食品です。(消費者庁

国内での流通が許可されている遺伝子組換え作物は食品衛生法に基づく安全性審査を経たものですが、2023年4月からは食品への遺伝子組換え表示が義務化されました。

消費者庁の任意表示制度Q&Aにおいて、「遺伝子組換えでない」と表示するための条件として、「適切に分別清算流通管理を実施し、遺伝子組換え農産物の混入がないことを確認した非遺伝子組換え農産物及びこれを原材料とする加工食品」であることとしています。
この確認方法のひとつとして「第三者分析機関等による分析」が挙げられています。

→ 詳しくは「遺伝子組換え食品の表示と検査について」

遺伝子組換え食品の検査

ビューローベリタスエフイーエーシーは、世界で初めて遺伝子組み換え作物検査の受託分析を開始した米国 FoodChain ID(旧Genetic ID)社と日本で唯一ライセンス契約を結んでいる分析機関です。
FoodChain ID法は検査可能な品種が広範囲にわたることが特徴です。行政法で通知されている大豆、コーン、ジャガイモ、パパイヤ、米、菜種、亜麻以外に、綿実、トマト、ビート、 アルファルファ等の遺伝子組換え作物も検査が可能であり、通知法では対象としていない品種の検知にも対応しています。

今回は検体をどのように検査しているか、使用機器とあわせてご紹介します。

1.検体の粉砕
写真:左からミルサー、グラインダー、フードプロセッサー 検体をグラインダー、フードプロセッサー、ミルサーなどを用いて全て細かく粉砕し、1g(加工品は2g)量り、2本サンプリングします。どの検体も並列で検査を進めます。
(写真:左からミルサー、グラインダー、フードプロセッサー)
2.DNA抽出・精製
写真:カラム(手前)、カラム内の液を落とす遠心機(左奥)、
チューブ内の液を攪拌するボルテックス(右奥)
FoodChain ID社の抽出キットを用いてDNAを抽出します。カラムにDNAを吸着させ、不純物を除去することにより、純度の高いDNAが得られます。その後、分光光度計でDNA量を測定し、濃度を調製します。
(写真:カラム(手前)、カラム内の液を落とす遠心機(左奥)、チューブ内の液を攪拌するボルテックス(右奥))
3-1.PCR と電気泳動(定性検査の一部)
写真:サーマルサイクラー PCRとはポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)の略で、DNAのある特定の部位だけを増幅する方法です。サーマルサイクラーと呼ばれる機器を用い、以下の3種類についてPCRを行います。
  1. 各作物に特異的な遺伝子(内在性遺伝子)配列:作物由来の遺伝子の有無を確認する
  2. 組換え体が持っている特有の配列(主にほとんどの遺伝子組換え農産物に導入されている35S プロモーター配列やNOS ターミネーター配列など。組換え体によってはこれらを持ち合わせないものがあるのでその場合はそれ特有の配列):組換え体の有無を確認する
(写真:サーマルサイクラー)
写真:電気泳動槽とパワーサプライ 次に電気泳動を行います。アガロースゲル(寒天のようなもの)にPCR後の溶液を入れ電圧をかけると、DNAは負の電荷を帯びているためマイナスからプラス方向に動いていきます。(青く見えているのはどれくらい流れたかの目安になるものです)
(写真:電気泳動槽とパワーサプライ)
写真:UV トランスイルミネーターでUV 照射したゲル アガロースゲルにDNAを染色する物質を加えているため、UVランプをあてるとDNAが発色しバンドとして可視化できます。それを付属のカメラで撮影します。
内在性遺伝子、組換え体それぞれについて、同時にPCRしているスタンダードと比較して結果の判定をします。
(写真:UVトランスイルミネーターでUV照射したゲル)
3-2.リアルタイムPCR(定性検査および定量検査)
写真:リアルタイムPCR装置 蛍光色素を用い、DNAの増幅量をリアルタイムにモニターできます。こちらも各作物の内在性遺伝子配列、35Sプロモーター配列などを増幅させるようにPCRを行います。 定性検査の場合、検定点となるスタンダードと検体DNAの反応を比較して陽性/陰性/検知不能などの判定を行います。 定量検査の場合、スタンダードから検量線を引き、検体DNAに反応した各遺伝子の量を数値化して混入率を算出します。 (写真:リアルタイムPCR装置)

なお、遺伝子組換え作物(GMO)検査の必要検体量は、原則として未加工品10,000粒以上(大豆であれば2.5kg程度)、加工品200g以上とお願いしております。

→ 詳しくは「必要検体量とその理由(遺伝子組換え作物(GMO)検査)

遺伝子組み換え大豆については食品表示基準に示されている通知法による検査も対応しています。
検査に関する詳細についてはお問い合わせください。

3days report シリーズ

遺伝子組換え作物(GMO)検査は、土日祝日を含む3日で実施・ご報告します(3days report)

*検体受付日を0日とし3日目にご報告します(年末年始を除く)
*特異定性検査、品種特定検査を除く
*ご依頼検体数、検体の状態、混雑状況等により追加でお時間をいただく場合があります
*異なるアイテムをELISA法で実施する場合は5日目にご報告します

参照

関連コラム

→ 遺伝子組換え作物(GMO)検査