ジビエとは天然の野生鳥獣の食肉を意味する言葉(フランス語)です。
シカやイノシシの被害は年々増加しており、鳥獣被害防止特措法により地域により捕獲や狩猟が認められています。近年では、この捕獲したシカやイノシシの肉を食材や化粧品などへ有効活用することが進められています。
ジビエ(野生獣肉)を使用したペットフード
ジビエ(野生獣肉)のペットフード(愛がん動物用飼料)利用への関心も高まっています。
ペットフードに関しては、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(以下、ペットフード安全法)がありますが、製造・販売にかかる基準・規格として、「安全な原材料を使用すべき」ということは記載されているものの、原材料そのものの製造方法については具体的に規定されていません。そこで、ジビエペットフード利用推進協議会は、安全性確保のため「安心・安全なジビエペットフードのために~ジビエペットフード原料に関するマニュアル~」を作成しています。
このマニュアルでは、ジビエは国内で捕獲・処理される二ホンジカ、イノシシの肉と定義されています。
ジビエは牛・豚と比較し、高たんぱくで低脂質、鉄分が豊富といった点から注目されています。特にシカ肉は低脂質のため、脂が多いと不適であるペットフードの原料にも適しており、ジャーキー、総合栄養食やウェットフード等、さまざまなペットフードに活用されるのを見かけるようになりました。
出典:日本食基準標準成分表2020年度(八訂)(文部科学省)
シカ肉:食品番号:11275 しか にほんじか 赤肉 生
いのしし肉:食品番号:11001 いのしし 肉 脂身つき 生
牛肉:食品番号:11017 うし [和牛肉] サーロイン 赤肉 生
豚肉:食品番号:11119 ぶた [大型種肉] かたロース 脂身つき 生
しかしながら、野生獣肉を使ってペットフードを製造する際は、特に注意が必要です。
シカ、イノシシの使用
シカおよびイノシシは、ペットフードへの利用が可能です。ただし、牛等のプリオン病(BSE等)の発生を防止するため、以下のとおり用途が限定されるとともに製造管理を行うことが求められます。
〇 シカやイノシシのジャーキー、骨のおしゃぶり、ふりかけ(肉、内臓や骨などの加工品)は、ペットフード用として利用可能
〇 イノシシの肉骨粉は、ペットフード、飼料や肥料として利用可能
× シカの肉骨粉は、ペットフード、飼料や肥料として利用できない
出典:シカ・イノシシの飼料・ペットフード・肥料への利用を検討されるみなさまへ(農林水産省)
なお、発見時に死亡していた個体は加熱したとしてもペットフードに利用できません。
〈使えない個体の例〉
- 交通事故などで死亡していた個体
- ネット柵等にからまり死亡した状態で見つかった個体
また、寄生虫や細菌などの感染症リスクや鉛などの異物混入、成分基準値にも十分注意する必要があります。
出典:野生獣肉を利用したペットフードの製造管理の例(厚生労働省)
※1 野生獣は、一般的に、寄生虫、細菌等に感染している可能性が高いことが知られています。野生獣肉の利用にあたっては、十分に加熱するなど、これらの感染症リスクに注意する必要があります。
※2 ペットフード安全法では、ペットフード中の鉛の上限値(3μg/g)が設定されています。
ペットフード安全法
ペットフードの安全性確保およびペットの健康を保護する目的として、「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)」が平成21年(2009年)6月に施行されました。
ペットフード安全法では、規格・基準に合わないペットフードの輸入、製造、販売が禁止されていますが、鉛弾により狩猟されたシカ・イノシシ肉では特に「鉛」の値への注意が必要です。
※1 基準値は水分量を10%として設定されたもの
※2 汚染物質:環境中に存する物質であって、意図せず愛がん動物用飼料に含まれるものをいう
※3 令和3年10月1日から砒素の含有許容量(15μg/g以下)の規定が、無機砒素の含有許容量(2μg/g以下)の規定に改められます。
ペットフード安全法以外で注意すべき点については、行政等へご確認ください。
(例)
- 家畜へのBSE予防の観点から、原料となるジビエの種類や製造方法による利用確認
- 医薬品に該当する原料化の確認
→ 詳しくは、ペットフード安全法 製造に関するQ&A(農林水産省)
キャットフードでの使用
犬は人との共同生活のなかで雑食性が進みましたが、猫は肉食性を保ち続けたため、人や犬に比べてたんぱく質をより多く必要とします。そのため「高たんぱく」かつ「低脂質」なジビエはキャットフードにも適した原材料です。
ビューローベリタスエフイーエーシーでは、「愛玩動物用飼料等の検査法」(独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC))にしたがって、ペットフードの成分規格検査を受託しています。
ペットフード安全法で定められた成分規格検査(必須20項目セット)がご利用いただけます。
また、AAFCO(全米飼料検査官協会)が設定している総合栄養食としての栄養基準に対応した検査を実施しています。
ペットフード安全法などペットフード検査に関する詳しいFAQ集はこちらを参照ください。