核酸とは
核酸とはデオキシリボ核酸(DNA)とリボ核酸(RNA)の総称です。ヌクレオチドの4種が連なった、生命活動に欠かせない生体高分子です。核酸の構成単位であるヌクレオチドは核酸塩基(アデニン、シトシン、グアニンおよびチミンまたはウラシル)、5炭糖、リン酸から成っています。
核酸関連物質の多くは、有用な薬理作用や生理作用を示すことが知られています。食品中の核酸の分析を行うことで、食品中のうま味についての考察と鮮度指標(K値)を求めることができます。核酸分析は検体を除タンパク剤の過塩素酸(PDA)を用いてヌクレオチドを抽出し、酸除去のためKOHで中和し、生成する過塩素酸カリウムの沈殿をろ過により除去して試料とします。試料に含まれるヌクレオチドをHPLCにより分析しています。
呈味性ヌクレオチド
イノシン酸(IMP)、アデニル酸(AMP)およびグアニル酸(GMP)は呈味性ヌクレオチドとして「うま味」があり、出汁などのうま味調味料として利用されます。また、グルタミン酸との相乗効果により、うま味を強く感じることが知られています。呈味性ヌクレオチドを多く含む、きのこ類、魚介類について分析を受託するケースが多いです。
K値
K値とは、アデノシン三リン酸(ATP)とその分解生成物全量に対するイノシン(HxR) + ヒポキサンチン(Hx) 量の百分率であり、その値が小さいほど鮮度が良好なことを示します。動物は動くためのエネルギー減としてATPを利用し、それと同時にATPは再生産されます。しかし死後はATPを再生産する機能を失い、それに伴ってさまざまな影響が与えられます。
魚介類を例に説明します。魚介類には多くのATPが含まれておりますが、死後はATPが分解はされても再生産されないため消失します。したがって、ATPの変化が鮮度低下の指標として用いられるようになりました。魚類の鮮度低下によるATP分解は下記のとおりです。
ATP → アデノシン二リン酸(ADP)→ アデニル酸(AMP)→ イノシン酸(IMP)→ HxR → Hx
また、頭足類、貝類などの軟体動物では下記の順になります。
ATP → ADP → AMP → アデノシン(AdR)→ HxR → Hx
加えて、甲殻類などの節足動物では上記2つの経路を介して分解が進むことが明らかとなっています。
一般的にK値が60%以上となると腐敗、刺身として適当とされるK値は20%といわれています。また、前述したとおり、魚類、頭足類、甲殻類、貝類など、魚介類中でも分解経路の違いがあることは明白ですが、魚介類の種類や温度管理等、さまざまな要因によって最終的に生産される物質や蓄積量も違うことが知られています。そのため、K値を検査することで鮮度の維持管理を正確に把握することが大切です。
ビューローベリタスエフイーエーシーでは、呈味性ヌクレオチドの分析、K値による鮮度に係る検査を実施しています。鮮度については揮発性塩基窒素(VBN)の確認検査や微生物検査(一般細菌数、低温細菌数)を併用することで、食品の状態をより正確に把握することができます。
関連コラム
参考文献
- 日本うま味調味料協会
- 海-自然と文化 4巻2号 2006 魚介類の死後硬直と鮮度(K値)の変化 小関聡美ら
- 食品中の核酸成分に関する研究 毛利威徳ら